暫く前、JATPヨーロッパツアーでのスタン・ゲッツとジョン・コルトレーンの珍しい共演の記録をご紹介したが、その後、その日に行われたゲッツの演奏記録、つまり共演者についての疑問を感じたので再び取り上げてみた。
この日のゲッツ・カルテットの共演者は、私に音源を送ってきた人の資料によるとゲッツの他、レイ・ブラウン(b)、エド・シグペン(ds)そしてピアニストはルー・レヴィーとなっていたので前回そのままご紹介した。正直言って、ゲッツとコルトレーンの共演に興味が集中して、ゲッツのサイドメンについてはそれほど神経を注がなかった。
そうは言っても、ルー・レヴィーのピアノに関しては初めて聴いた時からかすかな疑問があった。そんなわけで、この時の映像を持っているコルトレーン研究家、藤岡靖洋氏に電話した時「ピアノはルー・レヴィーに間違いない?」と問い合わせをしたのだが、その答えは前回のとおり。映像さえあれば一目瞭然なのだが残念ながらそれはかなわず耳に頼るしかない。そんなわけでここ暫く気合をいれて聴いてみた。その結論はヤン・ヨハンソンとなった。そもそもこの録音記録は1960年春のもので、レイ・ブラウンとエド・シグペンのリズム隊からあまり注意を払わなかったのだろう。何故かというとその前年の1959年の春、ゲッツはルー・レヴィー、レイ・ブラウン、エド・シグペンのカルテットでヨーロッパをツアーしているのでうっかりその年のものと思ってしまった。ところがゲッツ/コルトレーンの共演の年は1960年、だとするとピアニストはヤン・ヨハンソンで間違いない。
こんなことは、昔であったらすぐ間違いを指摘出来たろうが、やはり少しぼけてきたのだろうか?ただピアニストのプレー振りから疑問を抱いていたから、まあまあよしとしようか。
この年〈1960年〉のツアーでのゲッツの演奏はプライベートのテープ(未発表)で二つ持っているのでそちらもご紹介しよう。
Stan Getz Quartet with Jan Johansson(p),Ray Brown(b),Ed Thigpen(ds).
Amsterdam.Holland.April 9.1960.
Lover Come Back To Me/Pammie’s Tune/Spring Can Really Hang You Up The
Most/Gone With The Wind/Cherokee.
Scheveningen.Holland.April 9.1960.
All The Things You Are/Indiana.
アムステルダムでのコンサートでは、当時のゲッツとしては最良のプレーが聴ける。特に素晴らしいのはLover
Come Back To Me (アップテンポによる凄いイマジネーション溢れるプレー)とSpring
Can Really Hang You Up The Most(物語るようなバラード)。またゲッツの数少ないオリジナル、末娘パメラに捧げたPammie’s
Tuneもかわいらしいワルツでなかなか聴かせるしこの曲を聴衆に紹介する若々しいゲッツの声も心なしか弾んでいる。一方、シュベニンゲンのコンサートは良いには良いがそれほどでもない。
ここで又も気になるのがこの2つのコンサートの日にち。同じ4月9日となっている。尤も当時アムステルダムのコンセルトヘボウで行われたジャズコンンサートは、12時をまわった夜中に始まることが多かったので、夜中過ぎ、アムステルダム、其の夜シュベニンゲンだったかもしれない。アムステルダム、シュベニンゲンの距離は僅かである。
この二つのコンサートと、デュッセルドルフのコルトレーンとの共演の夜の演奏を聴き比べて、改めて1960年春のヨーロッパツアーでのゲッツのピアニストは、ヤン・ヨハンソンと確信した。 |