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- その2 -
Stan Getz With John Coltrane
暫く前、スウィング・ジャーナル誌において、コルトレーン研究家、藤岡靖洋氏が紹介されていたスタン・ゲッツとジョン・コルトレーン(藤岡氏に言わせればコルトレーンとゲッツ)の共演の演奏記録を手に入れた。1960年、JATPツアー中のドイツ、デュッセルドルフでの録音で、何しろゲッツとコルトレーンの共演という前代未聞の組み合わせが興味深い。この日のコンサートは事情が有り、聴衆は関係者のみ、ツアーに参加していたスターの一人、マイルス・デイヴィスも不参加ということで、ノーマン・グランツの個人的な楽しみで催したのではないかと考えてしまうほどの極めて珍しいコンサートだった。


先ず音質のほうはこのての未発表ものとしては抜群に良い。藤岡氏によると、この日のコンサートは映像も撮られたということで、とすると、後日、商品として発売する目的で収録されたものと考えてよさそうだ。だとすれば、マイルスの不参加は契約上の制約の為ということだろう。因みに藤岡氏は映像もお持ちということだ。


当日の演奏者、曲目、演奏時間などのデータをご紹介すると、

JATP All Stars featuring Stan Getz& John Coltrane

Dusseldorf,Germany.March 28.1960.

John Coltrane Quartet w/Wynton Kelly(p),Paul Chambers(b),Jimmy Cobb(ds).

OnGreenDolphinStreet(9:09)/Walkin’(7:20)/TheTheme(3:21)/BalladMedley:Yesterdays(PC.2:42)/Autumn Leaves(WK:2:03)/What’sNew(JC.2:01)/MoonlightInVermont(feat.Stan

Getz.2:07)/Rifftide(Stan Getz with John Coltrane.8:24)

Stan Getz Quartet w/Lou Levy(p),Ray Brown(b),Ed Thigpen(ds).

Out Of Nowhere(10:22)/The Thrill Is Gone(6:51)/Out Of Nowhere(9:39)/Woody’n You(7:43)/Pernod<私の手元にある資料ではタイトル不明となっていた>(8:04).


 さて演奏内容のほうだが、先ずコルトレーン・グループの演奏は、リーダー、マイルスがいないのでテーマなどはコルトレーンが吹き、例のシーツ・オブ・サウンズをところどころ駆使しながら熱演しているものの、どこかいまひとつ訴えるところが希薄である。大体、私は1960年の春、ヨーロッパ・ツアーでのマイルス・グループにおけるコルトレーンは、調子が出ていないと考えているが、これが数年後に達した自己のグループにおける完成度の高いプレーに至るまでの生みの苦しさか、あるいは体調のせいか、はたまた自己のグループ結成間近の為、心ここにあらずといった心境だったかわからない。


興味深いのはバラード・メドレーで、ポール・チェバース、ウィントン・ケリー、コルトレーンが各々1コーラスずつ演奏するのだが、チェンバースは全編アルコ、ケリーの“枯葉”は普段中間テンポで弾くことが多いが、ここではしっとりと弾いている。嬉しいのはコルトレーンが私のお気に入り、“ホワッツ・ニュー”をとりあげていること。例によってビタースイートなバラードプレーで、存在感がある。出来れば2,3コーラス吹いてくれればなお良かったのに、、、。続いてスタン・ゲッツが現れ得意の“バーモントの月”を情感こめて吹き上げる。ケリーのトリオをバックにゲッツが吹くのは珍しいといえば珍しいが、バックの3人は1957,8年、別々にゲッツのバンドにいたから、違和感は無かったろう。


さてお目当てのゲッツ、コルトレーンの共演“リフタイド(又はハッケン・サック)については少し詳しく触れてみよう。大体、ゲッツ、コルトレーンクラスの大物同士が共演するとなると、演奏曲について多少は主導権争いが起こったかも知れないが、”レディー ビー グッド“のコードの上に作られた”リフタイド“であれば両者納得であろう。サッカーの、因縁の日本、北朝鮮戦を第三国でやるようなものだ。”リフタイド“以外の選択肢とすれば、ブルースや、”オール・ザ・シングス・ユー・アー“あたりが適当だろうか?ところで演奏のほうだが、ケリーが短くスローテンポで弾きだし、テンポを上げて”ハッケンサック“のメロディーを使ってイントロを奏でる。テーマはコルトレーンが受け持ち、ゲッツはハモル役目。ブリッジはゲッツがアドリブして、最後のAの部分はコルトレーン。先発ソロはコルトレーンで、3コーラス。ファースト・コーラスではより伝統的なフレーズを多用して1955年時のマイルスとの録音を思い出させるが、2コーラス目からは次第に熱がこもってダブルテンポのフレーズが多くなる。続くゲッツはコルトレーンの熱いソロを柳に風と受け止め、全くのマイペース、いつものメロディックなスタイルで3コーラス。コーラス数を数える作業もゲッツの方が、はるかに数えやすい。このあたり、いかにも両者のスタイルが顕著に表れ面白い。要するに両者とも、それぞれのスタンスを守り通している。さて問題は次に出てくるピアノ・ソロ。これはどう聴いてもウィントン・ケリーに聴こえない。これは間違いなくオスカー・ピーターソンだ。そこで藤岡氏に電話を入れてみる。彼は映像を持っているので確実にピアニストが判別できるはずだ。電話に出た藤岡氏は「上不さん、それは途中でピアノが変わるんです。オスカー・ピーターソンでっせ!!!」。やっぱり。唸り声を上げながら、豪快に弾きまくるソロはやっぱりピーターソンだった。だとするとますます面白い組み合わせではないか。ゲッツ、ピーターソンの共演はいくらでもあるが、コルトレーンのバックをピーターソンが勤めるとは、、、。さてそのピーターソンのピアノ・ソロに続いてコルトレーンとコブ、ゲッツとコブの4バース交換の半コーラス、ゲッツ、コルトレーン両者のアドリブによる半コーラス、そしてテーマに戻り(ここでもコルトレーンがメロディーを担当)ブリッジをジミー・コブがソロを叩き、またテーマに戻る。


という訳で、興味津々、貴重な音源ではある。但し、、、名演というわけにはいかない。名演は簡単には生まれない。しいてこの日の名演を上げるとすれば、後半のステージに於けるゲッツの“スリル・イズ・ゴーン”だろう。尤もこれは熱烈なゲッツ・ファンの私の意見だからあまりあてには出来ぬ。ところで藤岡氏によるとこの日、2回コンサートがあったそうで、ゲッツの演奏の中に“アウト・オブ・ノーホエアー”が2度演じられているのでもそれが納得できる。先ほどの藤岡氏への電話で私はついでに「ゲッツのグループのピアノはルー・レヴィーに間違いない?」と尋ねたところ、「さあ、どうだったかな、上不さん、あんまり観てないんですーーー」!!!藤岡氏のコルトレーンへの傾倒ぶりがお分かりいただけよう。


藤岡氏によるとこの演奏(映像)、2年後の2007年には正式に公開されるとのことで、公開の折には大きな反響を呼ぶことだろう。世の中、まだまだびっくりするような録音、映像が埋もれていると実感したものだった。(2005年8月20日記)