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- その1 -
カフェボヘミアの未発表放送録音
 カフェボヘミアは1955年から1958,9年までの3,4年間(多分)ニューヨークのグリニッジビレッジのバローストリートにあったジャズクラブで、音響が良かった理由で幾つかのレコード録音の場所として今でもその名を残している。例えばジョージ・ウォーリントン、ケニー・ドーハム、アート・ブレーキー、そしてチャーリー・ミンガスなどのレコードがそれである。


 一方でレコードにはなってはいないが、このクラブからの放送録音が幾つか残されている。勿論、放送録音ゆえ音は決して良くはないが、レコード録音のギャップを埋める意味で価値は高い。ここでは私の持っている音源をご紹介するが、ご研究の一助となれば幸いである。


1)Buddy DeFranco at Cafe Bohemia

Buddy DeFranco Quintet w/Don Friedman(p),Dick Garcia(g),Wilbur Ware(b),Wil Bradley jr(ds)Feb.(?)1957.”Wir Funken Jazz”

Thou Swell/Lover Man/Interview with DeFranco/Soft Wind/Like Someone In Love/

Abstract Art.


 約45分の内容。デフランコの出来はまずまずというところ。当時の西ドイツ向けの放送で、Wir Funken Jazzを直訳すると<我々はジャズを放送する>となる。興味深いのは初期のドン・フリードマンが聴けることで、デフランコは「西海岸からやってきた素晴らしいピアニスト」と紹介している。又、ウィルバー・ウェアーの参加も面白い。まったくこのベーシストはユニークだが、ウェアー自身のトリオでもこのクラブに出演したこともある。インタビューでデフランコはドイツ人アナウンサーに「このグループで約2ヶ月演奏している。最近ブッキングエージェントを変えたので、またドイツにいけたらと思っている。1954年に行っているが、その時聴いたロルフ・キューン(ドイツ人、クラリネット奏者)に敬意を持っている」と語っている。この演奏テープを2,3年前来日したドン・フリードマンにあげたら、「私がサンフランシスコからニューヨークに出た直後の録音だ。素晴らしい思い出が蘇った。どうもありがとう」と感謝された。


2)Jay Jay Johnson at Cafe Bohemia

Jay Jay Johnson Quintet w/Bobby Jaspar(ts,fl),Tommy Flanagan(p),Wilbur Little(b),Elvin Jones(ds).early 1957.”Wir Funken Jazz”

Bernie’s Tune/In A Little Provincial Town/Angel Eyes/Old Devil Moon/My Old Flame/I Should Care/Daily Double/Solar(theme).


 有名なジェイジェイの1957年夏の欧州ツアーの直前の録音だろう。私はJ and Kも好きだが、このグループのほうがもっと好きだ。フラナガン、エルヴィンを擁したこのグループ、ジェイジェイの持った最高のコンボだろう。“Angel Eyes”やアレンジの面白い”Old Devil Moon”も良いが、オープニングを飾る“Bernie’s Tune”のドライブ感がたまらない。この日の演奏は私が28年前、350枚限定のLPで出したことがあるが、この秋(2005年)LPとCDで各々999枚の限定で又出す。なお最近、1957年のジェイジェイのスウェーデン、ストックホルムでの録音を手に入れた。スタジオ録音で音もわりと良い。


3)Lee Konitz at Cafe Bohemia

Lee Konitz Trio /Sal Mosca(p),Shadow Wilson(ds).April 20th.1957.”BandStanUSA”.

Kary’s Trance/Lover Man/Cork’n Bib.


 コニッツのトリオによる演奏はそれほど珍しくないが、ここではベースがいない。もっともレナード・フェザーの紹介ではピーター・インドがベースと言っているがどうも聞こえない。ブルースのCork’n Bibで、サル・モスカが左手でベースラインを弾いているから、インドは参加していなかったのだろう。何故このようになったかは判らないが、想像するにフェザーは録音現場にいず、当初予定のピーター・インドが当然参加したと思い込み後日、テープをよく聴かずにスタジオで<ピーター・インド、ベース>と紹介してしまったのだろう。ところでこのテープ、大昔、インドに送ったが「このリーはなかなか素晴らしい」と言っていた。<Kelly’s Trance>は<Play、Fiddle Play>のコード進行を基に作られたコニッツのオリジナルだが、ソロの中で

  <You’d Be So Nice To Come Home To>のメロディーが出てきたりする。


4)George Wallington at Cafe Bohemia

George Wallington Trio w/? (b),? (ds).November 24th.1956.”Bandstand USA”.

Strange Music/In A Sentimental Mood/Escalating.


 約15分の演奏。ウォーリントンといってもこちらはレコードと違ってトリオによる演奏。ウォーリントンは当時ボヘミアの音楽監督だったので、出演も多かったのだろう。Strange Music は良い曲で、洗練されたバップの香りがする。原曲はグリークだそうだ。ところでウォーリントンは際立ったバラード奏者ではないが、In A Sentimental Moodに聴かれるバラードプレイはしっとりした良いムード。一方Escalating はCherokeeを元に書かれたと思われる急速調の曲だが、バッド・パウエルとは言わないがかなりエキサイティング。ただ途中でフェードアウトされ残念だ。サイドメンの紹介はないが、ベース奏者はテディー・コティックのように良いリズムを刻む。そしてコティックよりソロがうまい。かって50年代初め、ハンプトン・ホーズと共に日本に滞在し日本のプレーヤーから<トターさん>と親しまれたノビー・トターKnobby Totahだろうか。当時トターはウォーリントンのグループで活躍していた。またドラマーはその頃ニューヨークジャズシーンで話題になったニック・スタビュラスあたりだろうか?


5)Miles Davis at Cafe Bohemia

Miles Davis Quintet w/Sonny Rollins(ts),Red Garland(p),Paul Chambers(b),Art Taylor(ds).July 13th.1957.”Bandstand USA”.

Four.

Same group as above.July 20th.1957.”Bandstand USA”.

Dear Old Stockholm/Bag’s Groove.

Same group as above.July 27th.1957.”Banstand USA”.

Bye Bye Blackbird/Tune Up.


Miles Davis Quintet w/John Coltrane(ts),Bill Evans(p),Paul Chambers(b),Philly Joe Jones(ds).May 17th.1958.”Bandstand USA”.

Four/Bye Bye Blackbird/Walkin’.


 いつものように素晴らしいマイルスのグループ、但しいつものごとくのレパートリー。


6)Randy Weston at Cafe Bohemia

Randy Weston Quintet w/Ray Copeland(tp),? (b),? (ds),Joe Carroll(voc.).

January 4th.1958.”Bandstand USA”.

Theme/Tea For Two/Exactly Like You/Little Niles/Saucer Eyes.


 ウェストンは良いが、キャロルのヴォーカルは邪魔。このキャロル、エリック・ドルフィーのライブでも飛び入りして、雰囲気をぶちこわしていた。ランディー・ウェストンはトリオでも出演した記録がある。


7)Roy Eldridge-Ben Webster at Cafe Bohemia

Roy Eldridge-Ben Webster Quintet w/? (p),? (b),? (ds).1958.”Bandstand USA”

Rifftide/Poutin’/In A Mellowtone.


 スウィング二大巨匠の男盛り時代の共演。ベンのPoutin’はいつものように聴かせる。誰か判らないが素晴らしいピアニストが大活躍。ベース奏者はジーン・ラミーGene Ramey、ドラマーはコジー・コールCozy Coleかもしれない。尤もこのグループ、ボヘミアというよりメトロポールあたりに出たほうが相応しいようなグループだが、ボヘミアの意外な幅広いブッキングが窺えて面白い。モダングループによる演奏も良いが、この晩のベンのどっしりとした演奏などを聴くと、現場で聴いてみたかったと思ってしまう。